額面を上げても手取りが思ったより増えない理由
昇給したり、転職して年収が上がったりしたとき、「思ったほど手取りが増えなかった」と感じた経験はありませんか。額面が増えれば手取りもそのまま増えそうなものですが、実際にはそうはいきません。この記事では、額面を上げても手取りが比例して増えない理由を、やさしく整理します。
増えた額面の一部しか手取りに残らない
結論からいうと、額面が増えても、その増加分の全額が手取りになるわけではありません。増えた額面からは、やはり税金と社会保険料が差し引かれます。そのため、手取りとして残るのは増加分の一部にとどまります。
さらにやっかいなのは、額面が大きくなるほど、増加分に対して引かれる割合(負担率)が高くなりやすいという点です。これには、所得税の累進課税と社会保険料の両方が関係しています。
累進課税で税率が上がる
所得税は累進課税といって、課税所得が大きくなるほど税率が高くなる仕組みです。税率は5%から始まり、最も高い区分では45%まで段階的に上がります。
ここで大切なのは、増えた分の所得には、より高い税率がかかる場合があるということです。たとえば、すでに高い税率区分にいる人が昇給すると、その増えた分には高い税率が適用されます。下の部分の税率は変わりませんが、増加分に対する税負担は重くなります。
このように、最後に増えた1万円に対してどれだけ手取りが残るか、という考え方を「限界手取り」と呼ぶことがあります。年収が高い人ほど、この限界手取りは小さくなる傾向があります。所得税の累進の仕組みは、別記事『所得税の仕組み』で詳しく解説しています。
社会保険料も増える
手取りが伸び悩むもうひとつの理由が、社会保険料です。健康保険や厚生年金などの社会保険料は、給与に応じて増えていきます。昇給すれば、税金だけでなく社会保険料の負担も増えるため、手取りの増加はさらに抑えられます。
ただし、社会保険料には標準報酬月額という区分に上限があるため、給与が非常に高くなると、ある段階から社会保険料の増え方は緩やかになります。社会保険料の仕組みについては、別記事『社会保険料の基本』をご覧ください。
ボーナスにも社会保険料がかかる
昇給だけでなく、ボーナス(賞与)についても同じことがいえます。かつてはボーナスの社会保険料負担が軽い時期もありましたが、現在はボーナスからも社会保険料が差し引かれます。
そのため、「ボーナスが増えた割に手取りがそれほど増えない」と感じることがあります。ボーナスからは所得税も引かれます(住民税は通常引かれません)。
「年収の壁」にも注意
パートやアルバイトで働く方の場合、収入が一定額を超えると、配偶者控除の対象から外れたり、自分で社会保険料を負担することになったりする「年収の壁」があります。
壁を少し超えたところでは、社会保険料の負担が新たに発生し、一時的に手取りが伸び悩むことがあります。ただし、働く時間をさらに増やせば総収入は増えていくことが多いため、長期的な視点で考えることが大切です。壁の金額や影響は制度改正で変わるため、最新の情報を確認しましょう。
まとめ
- 額面が増えても、増加分から税金と社会保険料が引かれるため、手取りは一部しか増えない
- 所得税は累進課税で、増えた分に高い税率がかかることがある(限界手取りが小さくなる)
- 社会保険料も給与に応じて増えるが、上限があり高所得では増え方が緩やかになる
- ボーナスからも社会保険料・所得税が引かれる
- 年収の壁を超える付近では一時的に手取りが伸び悩むことがある
- 正確な金額は給与明細で確認を
よくある質問
- Q. 昇給すると逆に手取りが減ることはありますか?
- A. 所得税の累進は超過分にだけ高い税率がかかるため、昇給で手取りが減ることは基本的にありません。ただし年収の壁付近では一時的に伸び悩むことがあります。
- Q. 手取りを効率よく増やすにはどうすればよいですか?
- A. 各種控除を活用して課税所得を抑える方法があります。詳しくは別記事『手取りを増やす控除』をご覧ください。ただし制度には条件があるため確認が必要です。
- Q. 同じ年収でも手取りが人によって違うのはなぜですか?
- A. 年齢(介護保険の有無)や扶養家族の人数、お住まいの自治体などによって、引かれる金額が変わるためです。最終的な金額は給与明細でご確認ください。